銅版画 (原題 Mezzotint) / M.R.ジェイムズ

イギリスの荘園風景

M.R.ジェイムズの『銅版画』 (原題 Mezzotint)はどんな話?

あらすじ

M.R.ジェイムズの「銅版画」という作品について、簡単に紹介します。

“絵画・銅版画コレクターのウィリアムズは、一点の銅版画を推薦され購入しました。その絵は何の変哲もなく、大して価値がないように思えましたが、実は少しずつ変化していく銅版画でした。ウィリアムズはその絵の舞台で何が起こったのか、真相を探ります。”

※以前は作品の詳細な紹介文を載せていましたが、著作権侵害の可能性を考慮して、簡略化しました。ご了承ください。

作者の M.R.ジェイムズ について

イギリスの学者であり小説家であるM.R.ジェイムズは、フルネームを モンタギュウ・ロウズ・ジェイムズ といいます。日本では M.R.ジェイムズ と記述される方が多いようです。
イギリスの名門イートン校の学長を務める傍ら、数々の怪奇小説を執筆しました。また、教会、聖書、古書、美術品関係の研究も行っており、彼の怪奇小説もそれらをテーマにしたものが多くあります。
彼の作風は古典的なゴーストストーリーで、大抵は平穏な日常生活を送っている人物が、偶然奇妙な出来事に巻き込まれるという形になっています。

 

 銅版画 とはどんなもの?

メゾティントで描いた絵

その名の通り、銅版を使った版画です。
銅版画は銅板の平面部についたインクは拭き取られるので残らず、溝部分に残ったインクが紙に転写されます。

銅板の加工方法は大きく分けて2種類あります。直接法と間接法で、それぞれの中で更に加工方法が分かれています。

  • 直接法:直接銅板を彫り込んで凹凸を作る方法
    →ドライポイント、メゾティント、エングレーヴィング
  • 間接法:銅板を腐食させることで凹凸を作る方法
    →エッチング、アクアティント

 

今回紹介した作品「銅版画」の原題は「Mezzotint」、そう 直接法のメゾティント です。

メゾティントの大まかな製作方法

  1. 器具を使って版面全体に細かい点を打ち、小さくめくれた部分をくまなく作ります。
  2. 次に、スクレーパーというヘラのような工具で、めくれた部分を削ったりならしたりして、絵を作っていきます。
  3. 最後にインクを擦り込み、表面を拭いて平坦な部分のインクを落とし、紙に刷ります。

メゾティントの仕上がりは、全体的にしっとりとして暗い印象のものが多いようです。

なお、メゾティントの作成方法は、こちらのサイトを参照しました。
他の方法についても説明があるので、興味のある方はリンク先をご覧ください。

 

アニングリー館はどんな荘園邸か

アニングリー館の外観については、こう描写されています。

“窓が三列並んでおり、質素な窓枠を田舎風の煉瓦が囲んでいる。それぞれに、球体または花瓶状の装飾をほどこした手すりが付いている。玄関は柱がいくつか並んだポーチ状のものだ。家の両側には立木があり、前面はかなり広い芝生になっている。”

“「英国の田舎の屋敷……(中略)ええと、三列の窓があって……一列あたり5個あるね……一階の中央には玄関がある……」”

この記事を書くにあたって、イギリスの荘園邸の写真を探してみました。イメージはだいたいこんなところでしょうか。

アニングリー館に近い形の屋敷

 

 

絵が動く というモチーフの魅力

上の絵は、作品に出てくる銅版画のイメージを描いてみたものです。右下にフードをかぶった人影が現れるという変化が起こり始めた段階です。

描かれた人物の顔が変わるとか、絵と会話ができるとか、そういう話も良いのですが、絵が一方的に何かのストーリを見せてくるというのは、非常に幻想的でロマンチックな仕掛けです。

とはいえ、この作品が見せる光景は甘美なものではなく、あきらかに不穏な事件なのですが。

私は、M.R.ジェイムズの作品の中で、この銅版画が一番気に入っています。
動くはずのない絵がじわじわ動く、それも意味ありげな光景を見せてくるのです。絵の裏に残っている千切れた書き付けを手がかりに、場所を特定し謎を探っていく、という過程がワクワクします。
この先何が起こるのか、現実に何が起こったのか、そんなミステリー要素に興味をかき立てられるし、それが解明されていく様子にはどこか心地良さがあります。

短いあらすじではその感じをお伝えすることは出来ませんが、きちんと作品を読んでいくと、じわじわ変化する絵と共に、こちらもじわじわと話に引き込まれてしまうのです。

実際に本を読んで頂くのが一番なのですが、残念ながら現在この話が収録されている本は絶版になっているようです。もし図書館で見かることがあったら、ぜひ読んでみて頂きたいと思います。

○創土社版
・M.R.ジェイムズ全集 上・下

○創元推理文庫版
・M.R.ジェイムズ怪談全集 1,2
・M.R.ジェイムズ傑作集

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